石丸製麺(株)様×日本アクセス
香川の手打ちうどんの技術が生んだ、乾麺の新たな可能性
毎年5月、東京・駒沢オリンピック公園で開催している日本アクセス主催の「The乾麺グランプリ」。全国の乾麺メーカーや食品メーカーが腕を競うこのイベントで、ひときわ来場者の目を引いたのが、石丸製麺の「全粒粉100%国産小麦まるごと細うどん」を使った洋風メニューでした。

見た目の華やかさもさることながら、ひと口食べて驚いたのは、全粒粉100%とは思えないほどの滑らかなのど越し。トマトスープとの相性も抜群で、小麦の香ばしさが広がる、まさにうどんの概念を覆す一品でした。この全粒粉うどんを開発したのは香川で120年以上続く老舗製麺メーカー、石丸製麺。今回は、4代目石丸芳樹社長に商品開発の裏側と乾麺業界の未来について伺いました。
うどん県・香川で生まれた、製麺のプロフェッショナル
うどん店の数がコンビニの店舗数を上回るともいわれるうどん県。その中でも、乾麺の生産量トップのエリアが、石丸製麺の本社がある高松市香南町です。石丸製麺はこの町で3つの工場を構え、1日あたり20万食以上を製造しています。

創業は1904(明治37)年。当初は小麦の製粉から製麺までを一貫して行っていましたが、戦後の流れの中で製粉業は大手に集約されていき、1966年に製粉部門を廃業。現在は製麺に特化した企業として、技術を磨き続けています。注目すべきは、機械でつくる乾麺でありながら手打ちに近い食感と風味を実現した石丸製麺独自の「手打ち式製法」です。
「1984年に父の代で『手打ち式製法』が開発され、業界初となる手打ち式うどんの商品化に成功しました。その頃は、製麺メーカーの技術や機械がどこも標準化されてきて、価格競争が激しくなっていた時代です。そんな中で、付加価値の高い製品とは何かを考え、生まれたのが“讃岐伝統の手打ちの技でつくる乾麺”でした」(石丸社長)
しっかりとしたコシや味を出すために、一晩寝かせて熟成させたり、足踏みで生地に均一に圧力をかけたりなど、独特な工程を重ねていく手打ちの讃岐うどん。石丸製麺では、これらの技を丁寧に分析し、製造技術に落とし込んでいます。例えば、熟成前に硬い生地を機械で斜めに重ねていく「綾織り」は手打ちうどんの足踏みに相当する技術で、こうすることでグルテンが形成され、弾力と粘りのある生地ができます。
また熟成させて延ばした生地を切っていく際にも、こだわりの技術があります。多くの製麺工場では円柱形の2枚のバーで圧力をかけながら切っていく「ロール切り刃」が大量生産に向いているため多く採用されていますが、石丸製麺では手打ち麺と同じように1本1本切っていく「包丁切り」の機械を1983年より導入。現在は高速回転しながら切っていく包丁切りカッターで素早く切っていくため、効率的かつ茹でたあとの食感をより手打ち麺に近い状態に仕上げることができています。
「こうした製造技術は、香川県内のうどん店で学んだことです。手打ちのうどん職人は小麦粉の質の変化、気温・湿度などの環境の変化を長年の勘と経験、そして技で安定した麺に仕上げます。弊社ではこれを最新のマシーンを使って標準化した生産方式を採用することで安定した品質を保ち、手打ちに負けない美味しさを再現できます。これからも、最新の機械を導入しながら技術を磨き続けていきたいと思っています」
石丸製麺の取り組みは、香川のうどん文化を守りながら“乾麺”というカタチでその美味しさを日本全国、そして海外へ届けています。
「さぬきの夢」が切り拓く、国産小麦の未来
うどんの原料は、小麦、水、塩のみ。シンプルだからこそ小麦の質が決め手となりますが、現在うどんに使われる小麦の多くはオーストラリア産です。タンパク質が豊富で製麺しやすく、価格も安価なため、国内の多くの製麺業者がその品質に頼ってきました。
「うどんの原材料における国産小麦の割合が少ない中で、北海道や愛知など各地で国産原料を見直す動きがありました。香川でも、讃岐うどんの産地として地元の小麦を復活させようという流れがあり、私もその一員としてプロジェクトに参加することになりました」と石丸社長は振り返ります。

香川県の土壌で讃岐うどんのための小麦を育てるという壮大な試みは、1991年から始まり試行錯誤を重ねながら、9年の歳月をかけて香川県産小麦の開発に成功しました。その名も「さぬきの夢」。でんぷん質が多く茹でるともちもちとした食感が特長です。一方で、タンパク質の量が少ないため、生地の形成には技術が求められますが、代々磨いてきた手打ち式製法と組み合わせることで、その弱点を補いむしろほかにはない付加価値を生み出しています。
「讃岐うどんといえば、強いコシが特徴です。私たちも長年、オーストラリア麦のがっしりとした麺に慣れていました。でも、『さぬきの夢』でつくったうどんを食べたとき、これこそが本来の讃岐うどんだと思い出させてくれるような感覚でした。もちもちとした食感は、今の若い世代にも受け入れられやすく、世代を超えて愛されるうどんができるという希望が湧いた瞬間でもありました。なによりも地元の農家の方々がつくる『さぬきの夢』を使うことの社会的な意味を、社員一人ひとりが強く感じています」
素材の力を引き出す技術と“融業”で広がる乾麺の可能性
石丸製麺では現在、オーストラリア産、北海道産、香川県産、愛知県産など多種類の小麦を使い分け、さらに複数の製粉メーカーから仕入れた原料をブレンドすることで、食感や風味、価格など多様なニーズに応える商品開発を行っています。日本アクセスと共同開発した『伝家の包丁切り中華麺』もその一つ。複数の小麦をブレンドし風味豊かに仕上げ、讃岐うどんの特徴である包丁切りの技術を応用して食感にもこだわり、発売後も売れ行き好調な商品です。

「原料の選択幅が1種類であれば一つしかできませんが、複数の原料を持っていれば“組み合わせの経済”でさまざまなテイストの麺をつくることができます。それを実現できるのは長らくオーストラリア麦が占めていた時代から、『さぬきの夢』をきっかけに国内の小麦の産地へ影響が広がり、原料の選択幅が広がるようになったからだと思います。さらに、業界外へ発展して、全国の農業・水産業関係者など異なる業種との“融業”にもつながりました」

“融業”は、異業種と協力し、お互いの強みを活かして新たな付加価値を生み出していくという石丸製麺の新しい挑戦です。これまで香川県の高瀬茶を練り込んだ「茶うどん」、北海道や富山県の昆布を練り込んだ「昆布うどん」、徳島県のレンコンを練り込んだ「レンコンうどん」など、地域の農産物や水産物を活用した商品を次々に展開。乾麺の可能性を広げるとともに地域素材の魅力を再発見するきっかけにもなっています。そして、その集大成ともいえるのが冒頭でご紹介した「全粒粉100%うどん」です。
「通常、うどんは小麦の表皮や胚芽の硬い部分を取り除いて製粉したものでつくられていますが、実は食物繊維やビタミンが豊富で、味や風味が一番出るのは取り除かれているその部分なんです。小麦の粒に含まれている大事な栄養素を活かして、一物全体で食べること、それが生命の営みなのだと考えています。でも残念ながら製麺しにくかったり、一般の方にとっては食べ方がわからなかったりします。それをみんなが食べられるようにと約1年かけて開発したのが『全粒粉100%うどん』です。全粒粉入りや全粒粉○%配合などといった商品は多くありますが、消費者にとって一番わかりやすいのが100%なんです。それは『さぬきの夢』と謳うときには100%として打ち出すように、その頃から変わらない矜持でもあります」

「全粒粉100%入りうどん」は、まさに業界の中でも一線を画す革新的な商品。乾麺グランプリでもアレンジメニューを通じて、より多くの方にうどんの新しい楽しみ方を届けています。
乾麺業界の担い手として
日本の伝統産業の一つとして縮小傾向にある乾麺業界で、石丸社長は「役割を自覚した企業が価値を提供し続けられる」と語ります。
「業界としては厳しい状況がこれからも続きますが、一定の需要があるのは確かです。日本アクセスさんはじめ様々なお客様からの「こういったものをつくりたい」というご要望に応えられるように、安定した生産体制を整えておくことは重要です。そのために既存の工場のブラッシュアップと新工場の新設を進めて基盤を整えていくこと、それが私たちの役割だと考えています。
そして、乾麺は自然食であり保存食でもあります。農産、水産物の旬に偏る収穫や、商品の端材を活用してもらえないかと各地の業者様からご相談をいただきますが、あらゆる素材も乾麺にしてしまえば主食になりますし、長期間保存することできます。古くから続いている乾麺、乾物は、常温保管ですので物流や在庫するのに膨大なエネルギーもかかりません。食の安全保障を考える上ではなくてはならないものになるかもしれません。もしもの時にも美味しく食べられる技術を担い手として持っておくべきなので、これからも技術を磨いていかなければならないと考えています」

そして、最後には日本アクセスとの取り組みとこれからの期待について語ってくださいました。
「乾麺グランプリは30社以上の乾麺メーカー・食品メーカーが集まり、大手メーカーとも肩を並べて競い合える場です。日本アクセスさんの集客力と発信力があってこそのイベントだと思います。乾物乾麺専門の部署があり会社全体で注力されているということ、商品開発を製配販一体でできるということも稀有な存在だと思います。これからも密に連携していきたいと思っています」
「さぬきの夢」をはじめその土地に根差した素材を丁寧に乾麺に仕立てて食卓へ届ける——インタビューを通じて石丸製麺の乾麺づくりには、地域への深い愛情が込められているように感じました。厳しい状況にある乾麺業界のなかで、石丸製麺は香川の地から乾麺の可能性を広げ、地域とともに歩み続けています。日本アクセスも、乾麺を全国の消費者にお届けするNo.1企業として、産地やメーカーの皆様と連携しながら乾麺市場のさらなる活性化と需要創造に取り組んでまいります。
◆石丸製麺株式会社
HP:https://isimaru.co.jp/
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